身近なデバイスで一番UI設計を入念にする必要があるものは、個人的にはスマホやタブレットPC等のタッチ操作を前提としたデバイスだと思っています。
その大きな理由として感じているのは「直接画面で触れる」という行為と「必要とされる操作や情報が複雑であること」の2つです。
画面に触れて操作するという行為は、ディスプレイの向こう側の世界をぐっと現実に引き寄せるインターフェースではあるんですが、逆に「触れて操作できてしまう」分だけ、期待する動作と結果の祖語が大きくなってしまいます。仮想現実の物体は用意された動きしかできないので、自由に配置したりひっくり返したりつまんだりという行為はできたりできなかったりですし、その挙動も現実のものと大きく違うかもしれません。3Dの人物がリアルになればなるほどちょっとした差異が気味悪く感じてしまう「不気味の谷」現象に似ているかも。
現在はまだタッチデバイスの黎明期であり、統一した操作ルールが存在せず試行錯誤の段階にある、という側面もあるかもしれません。Androidのバックキーなんかはアプリによって実装が違っていますしね。
挙動に関してはまだまだ試行錯誤の最中ですが、こちらから起こすタッチ、フリック、ピンチインの様な操作アクションは初期に設計されたものがうまく浸透しているようです。
これらのアクションがどういった特性を持っているのか、特定の機能にはどの操作が向いているのかを、ユーザーコストの視点から分析してみたいと思います。
タップ
ポンとタッチするだけなので、不可逆な操作なら一番コストが少ない。ただし誤動作に対するリカバリのコストが大きいので、タップは間違いにくく、また明確で迅速なフィードバックが必要。
視覚的コストが低い、機能の蓋然性も大きな特徴。
長押し
時間的コストが高い。一瞥で操作を想像できる蓋然性も低いので、やむを得ず同じオブジェクトに複数の処理を割り当てる等の必要性が無ければ使うべきではない。エキスパートユーザー向けの機能として「無くても使える」処理に向いている。
ダブルタップ
コストはタップよりやや高いが、蓋然性が著しく低い。誤作動の確立が減るので、タップによる誤作動が許容しにくい処理に割り当てるべき。
スワイプ・ドラッグ
タップよりコストは上がるが、指を離すまで確定しないため、リカバリや確認動作を含むものはタップと比べて総合的にみてコストが下がる。「操っている感」が強いので、レスポシブなUIでは非常に有用。
フリック
スワイプ・ドラッグと同様。時間的コストはやや低いが、蓋然性も少し低くなる。
ピンチ
スマホ上で「支える」という動作と同時にできないため一番コストが高い。誤動作も多い。一方で拡大縮小は画面遷移を伴わずに情報の量を整理できるので、情報を頭の中で整理するコストが低い。必然性があるシチュエーションに限って絶大な効果を発揮する。
それぞれの操作がどういった特徴を持っているのか、シチュエーションによってどれだけコストがかかる行為なのかを把握する事は、間違いの少ないUI設計の助けになるんじゃないかな、と思います。