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「ユーザーコスト」からUIを考える-序章

写真:Sebastiaan ter Burg

UI設計を行う上で自分なりに培った所見を「ユーザーコスト」の観点から紹介したいと思います。
今回は具体的な紹介をする前の序文として、UIを設計する上で私が大事だと思っているポイントを整理してみました。

UIとは何か

そもそもUI(ユーザーインターフェース)ってなんなんでしょうか?
詳しい方も多いと思うのですが、UIを考える上で基本に立ち返るためにちょっと歴史をまとめてみましょう。
Wikipediaで「UI」を参照すると

機械、特にコンピューターとその機械の利用者(通常は人間)の間での情報をやりとりするためのインタフェースである。

とあります。機械に情報を与えたり、開示してもらうための窓口にいる職員、といった感じでしょうか。
現実の窓口職員は、こちらが話せば様々な事務処理をしてくれます。これを自然言語処理というそうですが、人間の言葉は意外と曖昧なので、現在のコンピュータの能力では正確に理解できないそうです。
昔は画面に向かって「こうして、ああして」とキーボードから命令を打ち込むのが主流でした。これはキャラクターユーザーインターフェースと言います。
キャラクターユーザーインターフェースを使うには、コンピュータに命令するための、コンピュータの言葉を覚える必要があります。非常に学習に時間がかかる行為です。
そこで登場したのが、予め命令やそれによって得られる情報を画面に表示して選択する方法です。これがグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)というものですね。

学習コスト

現在、パソコンやスマホなど、一般的な人達が使うUIはこのGUIが主流になっています。それは先に上げた歴史が証明するように「機械にとって無理の無い方式」且つ「学習コストが低い」という特徴を併せ持っているからです。
機械の能力や、人が消費できる学習コストはシチュエーションや時代によってかわりますが、学習コストを可能な限り下げることは非常に重要なポイントです。

操作コスト

ところが、GUIという素晴らしいUIが普及した今日においても、プログラマー達は主にキャラクターユーザーインターフェース(CUI)を使っているようです。もちろん一部機能はGUIに置き換えられているのですが、複雑なプログラミングの主体はコンピュータへの命令をキーボードから打ち込んでいくCUIのままです。つまり高い学習コストを支払ってでも修得する価値が、キャラクターユーザーインターフェースにはあるという事ですね。

原理的にはプログラミングさえも完全にGUIに置き換える事は可能です。プログラマが打つ全ての命令をグラフィックとして用意し、同様にパラメータをグラフィカルに生成、アクセスする手段を用意してやればいいんです。ところが、プログラムで扱う命令文は膨大な数にのぼります、そこから派生するパラメータや生成される機能も膨大な数に上ってしまうため、一つ一つ探していたら大変なことになってしまいます。これこそがCUIがGUIに置き換えられない大きな理由の一つです。どんなに学習コストが低くても、操作コストが高ければそれは「悪いUI」なのです。

認識コスト

GUIが普及した今日、身の回りのGUIを見回してみると共通したアイテムが見つかるはずです。GUIの象徴、アイコンです。例えばアプリケーションを起動する場合、そのアプリケーションに割り当てられたアイコンをクリックなりタップなりすることで起動することができます。それが何のアイコンであるか識別するにはアプリケーション名のリストで十分なのに、なぜアイコンが使われるのでしょうか。説明をせずとも一度使ったことがある人ならわかりますよね。見やすい、探しやすいからです。目的のものを見つけることが容易であること、認識コストが低いUIはより優れたUIと言えそうです。

心理コスト

先ほどのアイコンのくだりを読みながら、もしかしたら「ただのリストだと味気ないしね」と思った方もいるかもしれません。アイコンは明らかに、見やすさだけでは説明できない別の印象を私達に与えています。そういった印象では、アイコンが配置されている画面の背景が象徴的です。壁紙って機械に命令を与えているわけでも、大事な情報を表示しているわけでもないのについ使っちゃいますよね。必要がないのに普及している機能。これもUIの大事な要素と言えそうです。自分の大好きなものが写っている壁紙と、大っ嫌いなものが写っている壁紙があったら、後者を選ぶ人はあんまりいないと思いませんか?このような心理的なハードルを前3つの例に習って心理コストと呼ぶことにしましょう。

それぞれのコストは、人がUIを使おうとするときネガティブに働く要素です。つまり、コストの低いUIとはポジティブな、優れたUIと言えそうです。
次回からは、この4つのコストを柱にして、良いUIを作るためにはどうしたらいいのか、を考えていきたいと思っています。